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キッチンペーパーとおじいさん
神奈川県三浦半島の小さな駅前のスーパーでの2年半前のこと。 感染症の影響でマスクや消毒液だけでなく、一時的にトイレットパーが店頭から消えた、その時に同時に消えたのがキッチンペーパー。 店頭には、キッチンペーパーはおひとりさまひとつだけという注意書き。 僕は食料品を買ってレジに並ぶと前には杖をついたおじいさん。 おじいさんが会計をしようとしていたら、レジ係の人が キッチンペーパーはおひとりさまひとつまでなんです と、諭していた。 係の人の言葉には棘はなく、こんな事態だから我慢してね、というニュアンスがあった。私も仕事としてルールは守らなきゃいけないの、といった感じで、じゃこれは返してきますね、と。 僕が察するに、お爺さんは杖をついて歩いてきた。どれくらいの距離なのかは分からないけれども、杖をつくような高齢者が外出するというだけでも苦労だろう。 じゃあ、そのキッチンペーパーは僕がひとつ貰いますよ、と声をかけた。 振り返るおじいさんは何ごとか不明の眼差しだった。 レジ係の人は、黙って僕のカゴにキッチンペーパーを入れようとしていた。...
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